Saunner Columns

Interviewed by カーツさとう

2017.3.7

世界一周サウナひとり旅『第1回・哀愁の北アメリカ大陸篇』

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2015年7月27日。一人の男が成田からバンクーバーへと飛んだ。

男の名はサウナネーム『Sauna Donkey』。旅の目的はただひとつ。世界一周サウナひとり旅!

青い地球の津々浦々を、燃えるサウナを巡って回る、“サ旅”だの“遠征サウナ”だのといった話とはスケールも規模も桁が違う一大サウナエクスペリエンス!!
一部上場企業に勤務し、なにひとつ不自由のない独身貴族を満喫していたこの男を、世界のサウナへと駆り立てたものはなんだったのか?
そしてそこには何が待ち受けていたのか?

これは『Sauna Donkey』氏自らが回想し、独白した半年にも渡るその灼熱の旅をまとめたものである…。日本のサウナーよ、心して読むがいい。

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2015年の春に、長年勤めた会社を辞めましてね。でも辞めた会社が結構ちゃんとした会社なんで、辞めたら辞めたでド~ンと金が入ってくるし、いやらしい話、給料も良かったんで金はあってさ。

それで、このあと何か仕事を始めるにしても、前から行きたかった世界一周に行くなら今じゃねェかって。それもせっかくだからビジネスクラスで世界一周しちゃおうと。いやらしい話、金はありますからハハハハ!

で、どうせ行くんなら半年くらい行きたいし、ほら、半年も行くんなら何かテーマみたいなものがあった方がいいじゃない? それで、これはサウナだ!! と。フィンランドには前にサウナ入りに行ってたけど、フィンランド以外の国のサウナも色々入ってみたいし。

それでまずはバンクーバーに行ったの。で、飛行機はビジネスクラスで贅沢したんだけど……あ、贅沢っていっても意外と安いんですよ、ビジネスクラスの世界一周料金って。70~80万円。まぁそれはいいんだけど、飛行機は贅沢しても、さすがにホテルまでは贅沢できないんですよ。半年ってことは180日くらいでしょ?

今までは、ほら、またいやらしくなっちゃうけど金はあったから、どこに旅行に行くにも高級ホテルに泊まってたんだけど、さすがにそれを180日も続けられないんで、これはもう安いドミトリーとかゲストハウスに泊まることにして。

いや~この安宿に泊まり歩くっていうのが後々響いてくるんだけど、最初行ったバンクーバーも観光地だから、街サウナはなくてもホテルのジムだのスパだのあるって思ってたんですよ。ところが考えてみたら安宿にはありゃしないんだよ、サウナなんて!!

あえて何にも予定は立てないで行ったからね。とりあえずバンクーバーに行って、ホテルもそこで決めて、次の街に行くフライトもその街に飽きたら移動するって感じで。だからバンクーバーのどこにサウナがあるか? なんてこの時点でわかりゃあしない。

でも、iPhoneがあるからググるワケ。それで見つけてチャリンコ借りて行ってみたら、だいたいゲイ向けサウナ。考えてみりゃバンクーバーってゲイの街なんですよ。北アメリカ大陸の西海岸ででゲイの街っていったらサンフランシスコかバンクーバーなんですよ。

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一応サウナを覗いてみたら、男の裸の写真とかブァ~ッって貼ってあってね。それでその隣は必ずタトゥー屋。

でも考えたね。もともと登山が好きだったんですよ。日本では結構登ってて。それで山から下りる時の楽しみっていったら温泉。必ず登山口あたりには温泉がある。で、その温泉にはサウナがついてる。それでオレ、サウナにハマったんだけど、その論理で考えたワケ。

バンクーバー近郊に“グラウスマウンテン”っていう有名な山があるんで、そこに登れば、帰りに絶対温泉があってサウナがあるはずだって。

いや~そしたらねェんだ!! サウナも何も。

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それでもうバンクーバーはダメだ、ニューヨークだ!ってニューヨークに飛んだんですよ。

ニューヨークには有名なサウナがあるのを知り合いから聞いてたから、『Bear and Birch』っていうゴールドマンサックスの敏腕トレーダーが退職して造ったというサウナに行ったんです。

それでオレ、酒飲むからバスで行ったんですよ、確かマンハッタンの東バスターミナルから。ちゃんとそういうのGoogleマップで載ってるから。

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それでバスに乗ったら2~3時間ぐらいかかるとんでもない田舎なの。

思い返してみたら、ニューヨークじゃなくてニュージャージーだったわ、って思い出してさ。
でもソレに輪をかけてヤベェって思ってのが、バスを降ろされた場所!

広い道が走ってて、その周りは何にもない荒野!! せいぜいあるのが自動車の倉庫とかさ、もうアメリカ映画に出てくる典型的なアメリカの荒野!! そんな一体どこにサウナがあるんだっていう所に降ろされたワケ。
それでGoogleマップで調べたら、そこからサウナまで歩いて3キロだってさ!!
車で行くことしか想定されてないんだよね。

しょうがないからトボトボ歩いてたら周りはどんどん淋しい森の中みたいになっちゃって。だいたい人の気配がないんだから。それでもうUターンするなら今が限界って時になって、やっとポツンと現れたんだよ『Bear and Birch』。オーナーは元ゴールドマンサックスの敏腕トレーダーだかなんだか知らないけどさ、こんな土地代タダみたいな所に造るなんて、けっこう締まり屋なんじゃねェの?

でも、入ったらこれは良かった。フィンランド式とロシアのバーニャタイプのサウナがあって。その元トレーダーってのがロシア出身なんで、バーニャは気合い入っててね。ベンチがストーブよりかなり上で、そのストーブに直接ロウリュされる水が流し込むみたいな仕組みになってて。

水着を着て混浴なんですけど、客はオレの他にはオッサンが少しいるくらいですね。でもさ、そこは良かったんだけど、考えてみたら帰るのが大変なんですよ。また3キロ歩かなきゃならないわ、日が暮れたてきそうだわ。日が暮れたら森の中ですからね。死にますよ、そんなの。

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それでもう早歩きでさっきのバス停に戻って。そしたらニューヨークから来た時に降ろされたバス停はあるんだけど、反対車線にニューヨーク行きのバス停が無いんですよ。日本の感覚だと道路の反対側には対向車線のバス停があるじゃない? それがないんだ、田舎だから。ちなみにこの時、iPhoneの電池はもう切れちゃってる。

でもまぁ、降りた所の反対側で手を上げりゃあバスも停まるだろって待ってて、やっとバスが来たから手を上げたら、猛スピードで通り過ぎていきやんの。

もう外は真っ暗ですよ。絶望的。で、バスも1時間に1本だし、時間を潰す喫茶店も当然無いし、もうとにかくバス停を探そうとその道を歩いてたら、遠くに灯りが見えて、それがインディーズ系のコンビニ。
そこで、バス停はどこにある? って聞いたら、

「2キロ先!」

だって。それで地図を書いてもらったら、その地図がまたヘタクソだしさ。トボトボまた2キロ歩いて、やっと見つけたバス停が、膝の高さくらいしかないスゲェ小さいヤツ! わかるか、そんなの!!

ま、それで帰ったんだけどさ。そのあとはマンハッタンのイーストヴィレッジにある『Russian & Turkish Baths』っていう、これもロシア系のけっこう有名なサウナにも行って。そこはまぁそこそこ良かったですよ。歴史もあって、ロバート・デ・ニーロとかも来てたんじゃないかな。でもニューヨークってロシア人多いから、そういうコミュニティーがあるのかな、だからフィンランド式よりもバーニャの方がココも気合い入ってる感じかな。

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メシ旨かったっすよ。そんなに腹減ってもいなかったんで、一番軽そうなベーコンエッグ喰ったんですけど。
施設全体の雰囲気は川崎の『ビッグ』に似てる。あんなオヤジが集まる感じ。

で、次は南米のチリ行ったんですよ。

ニューヨークでサウナにありついたSauna Donkeyは、この後、サウナ情報皆無の大陸・南米へと飛んでいた。
次回『混沌の南米大陸篇』にご期待ください。

〜次回3/12(日)に更新予定〜